おい、と近いところで声がした。聞き覚えのある低い声。もぐもぐと口の中で彼の名前を転がす。ひじかたくん、
今すぐぱっと目を開けて「起きろよ、いつまで寝てんだ」なんて言ってくれている彼を視界に入れてしまいたいのに、昨日夜更けまでだらだらと酒を飲んでいたせいでなかなかうまくいかない。いつになく優しい声だ。いつもそんな風に話してくれてたらいいのに、俺と会うといつも怒らせてばかりいる。まあそれはお互い様なんだけど、いつも顔を合わせるたびに角突き合わせてくだらないことで言い争いになってみたりして、数えるくらいでしかこんな、穏やかな話し方をする彼にぶつかったことがない。しかも全部自分とは違うところで、喋ってるのを横で聴いてたとか、呆れ半分でゴリラに向けて話している声だったり、もしくは総一郎くんの話をしてるときだったり、主に他人に向けてのものばかり。いつかは、なんて思いもあるが、でもそんなことを素直に言えていれば多分こんなことにはなってない。

ひじかたくん、もぐもぐと口の中でつぶやく。目がやっと開いた。ほんのちょこっとだけだ。しみるような目の痛みにすぐ閉じてしまう。おい、と根気よく彼は声をかけ続けてくれている。ついでに頭のひとつも撫でてくれたりとかすればいいのに、この時期の寝起きはいつもよりも三割り増しでくるくるになる天パの髪のさわり心地は(自分で言うのもなんだけど)なかなかのものだ。だからってわけじゃないけど頭撫でてくれたりしたついでにちょっとほだされてくれたりしねーかななんて打算的なことも思う、でもその前に、このやさしい声に言いたいことがある。
「…すきだ、」
音になった、のと一緒に目が覚めた。ぱっと目を開ける。慌てて。顔が赤くなるのが解って飛び起きたら頭がくらくらした。違うんだよ今のはなんかの間違いでっていうか間違いってなんだチクショー、
なのに、うっかり言ったことに慌てる自分の片割れ、目をまるくして狼狽しているはずの土方はいなかった。
「起きろよ」
またしても声。銀時はふと、枕元を見る。携帯電話、の、目覚ましボイス。
「いつまでも寝てんな、オラ」



20120701
初めてかいたぎんひじが出てきた こういう夢を見たので