優しくするからとか痛くしないからとか、まるで女の子に言うような調子だと思った。金時にとってそれはもしかしたら自然体でも出来てしまうことなのかもしれなかったが、少なくとも土方にとっては異様だった。「気持ち悪い」
「えっ。大丈夫」
服脱がせていい、と言われたところで言ったのは、確かに土方も悪かった。
ベッドルームに似合いの、オレンジ色のライトだけがやわらかくふたりの顔を照らしている。キャンドルとか好き、と言われた時に興味ねえ、と返しておいてよかった、と土方は思った。それくらい、今日の金時はすごかった。なんていうか、至れり尽くせりなんて言葉が甘く感じるぐらいだ。土方は生まれて初めて、自分はもしかしてどこぞの王女さまかなんかだったんじゃないか、と思った。いや、女だった経験なんかないんだけど。思わずそう思ってしまうくらい、金時のエスコートは完璧で、ああベッドまでの赤いじゅうたんを敷いてそこをまっしぐらってわけだな、とランチから土方に身構えさせるほどだった。…そう考えるとこの完璧なデートコースは大失敗だったとも言えるのかもしれないが、そこはそれ、かわいいホストのがんばりに免じて、気づかないふりをすることにする。
さて。


「ちげーよ、おまえが。…じゃなくて」
金時のことを指して言ったのだと勘違いされて、そのきれいに整った顔がみるみるうちに曇る。慌てて土方は打ち消して、言葉足らずの自分を噛んでやりたくなった。金時は甘ったるいことを言い過ぎだが、俺は言わなすぎだ。それは、誰かに言われるまでもない。でもだからってじゃあ使え言えって言われてはいわかりましたとはいかないのだが──「普通でいい、金時」
そう言って金時のふわふわした髪に手を伸ばして、やわらかい金毛の羊のようなその頭を撫でる。「いつも通り、で」
今日一日初めてつきあう、処女って書いておとめに対するような扱いを受けた。土方はホストとつきあうのは初めてだし男と寝ることを前提のつきあいをするのももちろん初めてだから、こんなもんかと思って好きなようにさせていた。でも相手は金時で、それこそ下の歯が生えそろわないようなうちから知っているような間柄だ。金時は大学に行かなかったからそこで道が違えてしまったけれども、そこまでは一緒だった。ずっと一緒だったのだ。そんな相手に、とるような態度じゃない。
「おまえをよこせよ」
「──ひじかた」
ごくり、とつばを飲んだ金時の目が、いつも土方の見ている彼のものになる。まるで飾り立てた宝石みたいなやさしい目のいろは魅力的だと思うが、土方の金時のものじゃない。まるで別人みたいで、まる一日少し変な気分だった──もし言う機会があったら、今度言おう。そう思いつつ、金時が言葉を改め、押し倒した土方の服を脱がすから、と事後承諾のかたちで宣言して、はぎ取る手伝いをする。とはいえ、腕をあげたり、腰を持ち上げたりする程度だったが。
押し入ってきた舌の熱と荒々しさにぎゅっと息を詰めてしまってから、つとめて体の力を抜く。かみつくような勢いで肌を愛撫されて、ぞくぞくと腰が震えた。下着はまだつけたままでいたが、それをいっそはぎ取ってほしい、と思ったことは口には出せない、でも事実だった。ゆるされた口が吐く息が熱をもって、もどかしい。

さっきまでのどこかぎこちないやり方をドアの外に置き忘れたみたいに、金時の手はなめらかに動いて、土方を追い詰めた。下着の上からきわどいところに指を這わされる。いきなり局部をいじられたというのに、性急だと思うよりも先にはやく、と言いたくなった。なのに、金時ときたら。まだ服を着たままでいる。
「…てめーも、」
「ン、脱ぐね」
そう言って、ゆるめていたシャツを腕をあげ、するりとそのまま脱ぎ捨てる。腕のうごきひとつとってもセクシーだ。すげーな、なんか。土方はなんとなくいたたまれなくなって、目を反らした。それくらい、金時はなんだかいやらしかった。土方が今まで知らなかった生き物のように見えた。
さらっと下まで脱いでしまってから、もう一度ベッドにせり上がってくる金時の体はきちっと締まっていて、甘いものばかりしょっちゅう食べている人間の体には見えなかった。ジムなどに通うでもなし、食べても太らない体質なんだろうか。おんなが知ったら羨ましがるだろう、そんなことを、土方はちょっととろけた頭で思う、
「……」
ふと、ふわふわした頭で金時の、股間に目がいった。ちょっとたってる、そう思って顔が熱くなるのよりも先に、違うことの方に気がいってしまった──したのけが金色い。しかも髪よりもちょっと色が濃くて、ライトに照らされているせいでか、ぴかぴか、オレンジ色に、見え、
「えっなに、ちょっ」
触ったらオレンジのにおいでもするんじゃないか、なんて思ったわけじゃなかったと思うが、気づいたら土方はその毛に向かって手を出していた。やわやわ、指先で付け根をつついてみる。金時は一瞬息を詰めて、「どうせならさわってほしいんだけど、」とかなんとか言う。
ちょっと考えてから、土方は居住まいを正して、もう片方の手も使って金時のそれをいじってやった。根元から、指で作った輪でもってすりあげる。裏筋のところを親指の爪でつつ、つ、となぞるようにすると、金時がはっ、と息を吐いた。いたずらでもするような感じ、自分の手に握っているものが男のもちものであるのは間違いないのに、なんだか空気がまったりしすぎていて、どうしてかピンク色にならない。
「ひじかた、体、倒して」
言われるままにうつぶせると、下着を脱がせないまま背中側から手をねじ込まれた。尻をなでていった指先の、ささやかな冷たさがぞくぞくと背骨をふるわせる。
「ん、…」
そのままほとんど自然な動作で、足のあいだに秘めたそこへと指が触れてきて、思わず甘ったるい息が漏れた。自分のも熱を持ってきたのが解って、じわ、と腰がゆれる。金時のものがひときわ固くなって、手の中で跳ねるのがわかった。体勢的に金時のそこへ伏せるような格好になってるから、もし今ここに誰かきたら、土方が金時のものを口でしているものだと思うだろう──実際、距離は近かったし、先端からぷくりとしずくをこぼし始めているのなぞ見ると、いっそそうしてやってもいいのかも、なんて思う。
「ん、あっ」
ぴたぴたとそこを確認するように叩いていた指の腹からかわって、つぷんと指先が入ってくる。土方のそこは、されるがままに金時の指をおとなしく受け入れて、まるで味わうように食んでいるみたいだった。ぷち、と何か泡の跳ねるような音がする。いたたまれない、ていうか、はずかしい。それは指が抜けていくまで続いた。

「力抜いてて、」
体をひっくり返されて、ほとんど胸に着きそうなほど膝を高く抱えられる。腹がくるしい、もしかしたらそう思うのはちょっと早かったのかも──金時のが、入ってきた時の方が、くるしかった。
「はっ、あ、ぁ、ア」
最初はじくじくとした痛みがあったが、金時が動かずにいてくれる間に少しずつとけて、開かれているという違和感だけが残った。動いてもいい、と言うかわりにつないだ指に力を込めると、金時は目だけでふっと笑って、じわじわと腰を使った。引き抜かれる時に腹の奥の、変なところからこそばゆいような快感がせり上がってくる。あっ、思わず漏らした声を金時がかわいい、とひとつずつ拾い上げていく。
「ん、ぁっ、あ」
ふと、土方は熱でうるんだ目をあけ、腰を持ち上げられているせいで見えてしまう、そこに目をやった──自分の、大きく開かれたそこへ金時のふとく固くなったものが出入りしている。ぐじゅ、ずぶ、なんてやらしい音があがって、肉を打つぴたぴちというおとが色を添える。セックスの音とにおいが部屋を満たしていて、間違いなくピンク色。そこに、
「はっ、ン」
金時の、下の毛が跳ねた淫水でだろうか、きらっと光ったのが見えた。いや、あっだめだこれ、…う、
「や、べ、ぐっ、は、は! やべー!うける!」
「えっなに、えっ待ってちょっと笑うのだめ、締まる、」
思わずぎゅぎゅっと後ろを締め付けてしまって、気持ちよさにあっ、なんて語尾にハートマークがつきそうな声を漏らした土方よりも、男らしくあえぎを噛んだ金時が、先にいく方がはやかった。荒くなった息を整えた彼が、乱れた前髪のあいだからうるんだ視線を送ってくる──えっ。ごめん。



きらきらひかる



20130226
この間金ちゃんの下の毛が金色ってことに改めて思い至りそれがツボに入って抜けなくなる土方くんかわええなあって妄想していた結果
このあともずっと笑われ続けてえっちするたびにぶって思いだし吹きされたりしてもー!いい加減飽きて!てか電気消すから!!とか言う余裕のないナンバーワンホスト金ちゃんかわいいねってなんかそういうはなし